50km走の準備は整いました。練習を重ねてきました。
その中で、克服しきれないけれど対策は立てられる。そんな性質の問題があります。トイレ問題です。
私は我慢が利くタイプです。そんな私でも、20km、25km歩行の途中でトイレへ行きたくなり、中止に追い込まれた経験が数回あります。完全な予防は不可能。ここが出発点の認識です。
経験から見えてきた自分のNG行動は、我慢して後手に回ること。「まだ大丈夫だろう」で先送りした結果、状況の悪化とともに継続を諦めてきました。歩くペースよりもお腹が気になって集中が途切れる。これが致命傷になります。集中が切れた瞬間、フォームが崩れ、呼吸が乱れ、ペースの修復に時間を取られる。トイレ単体の問題ではなく、歩行全体の問題に化けます。
そこから対応を切り替えました。「トイレに行きたいかも」と頭をよぎった時点で、最短距離のトイレへ向かう。不安要素は小さい段階で処理する。仕事の話と地続きの考え方ですが、ここでも同じ原則が効きます。後ろに引きずるほど、対処コストは膨らみます。早い段階の1分は、遅い段階の10分に化ける。この実感が体に染みついています。
大会のコースマップには目を通し続けました。トイレの位置を頭に入れる。それだけで不安が縮みます。「ダメになったとしても、あと3kmで救済地点がある」。この一行が頭にあるかないかで、足取りの軽さが変わります。不安のない状態を作ることが完走率を押し上げる。これが私の考えです。
長距離種目では、フィジカルと並んでメンタルの安定が必須条件です。脚が動くかどうかの前に、頭が落ち着いているかどうかが問われる。揺れた頭は、揺れたフォームを呼びます。
投資の世界に「必勝法は無いが必敗法はある」という言葉があります。正解の見えない場面でも、多くの人が転ぶ法則は見える。その行動を選ばない。歩行にも当てはまる原則です。我慢の引き延ばし、コース把握の手抜き、不安の放置。並べてみれば、どれも必敗法の側に立っています。歩行の必勝法はわかりません。けれど、必敗法を一つずつ外していけば、完走の確率は上がっていく。
大会当日、お腹の調子は安定していました。トイレ休憩は1回で済みました。
トイレの場所がわからない。次まで持たせようとする。こうした必敗法を避けられたのは、自分の歩き方研究の積み重ねがあったからです。研究に感謝です。
次回、第93話は「前半かかり気味 カッコつけた反省」です。

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