歩く時、お腹に少し力を入れてみましょう。たったこれだけのことで、歩き方は大きく変わります。
「お腹に力を入れる」とは、どういうことでしょうか。腹筋運動のように腹直筋をギュッと固めることだと思っている方が多いのですが、ここで言う体幹は少し違います。お腹周り全体を「軽く締める」感覚、つまり浮き輪を内側からふくらませて支えるようなイメージです。
まずは静止した状態で試してみます。
① 口からゆっくり息を吐きます → お腹が締まってきます ② 口か鼻から息を吸います → お腹が緩んできます
通常の呼吸では、このように吐くと締まり、吸うと緩みます。これは横隔膜と腹横筋の自然な連動なので、誰でも体験できます。
ここで練習です。お腹を緩めないまま呼吸してみましょう。やり方は簡単です。鼻からゆっくり吸います。すると、お腹を締めたまま吸うことが出来ます。「胸とお腹の境目あたりを少しキープする」感覚です。
逆に、口でも鼻でも勢いよく吸い込んでみてください。一気にお腹が伸びて、力が抜けてしまいます。これが良くない例です。慌てた呼吸、浅い呼吸、口呼吸の癖がある方は、知らないうちにこの「コアが抜けた」状態で歩いていることが多いのです。
静止した状態で慣れてきたら、次は歩きながらやってみましょう。歩行中は呼吸をしていますので、お腹はガチガチには締まりません。100%の力で固める必要は無く、20〜30%くらいで十分です。大切なのは「お腹を緩めない」感覚です。
この感覚で歩けるようになると、
- 身体のブレが減る
- 歩行が安定する
- 脚が上がりやすくなる
という変化が出てきます。それだけでなく、左右に揺れる骨盤が安定するので膝への負担が減り、背中が真っ直ぐ伸びるので肩こりや腰痛の予防にもなります。「最近歩いた後に腰が痛い」という方は、コアが抜けて腰の筋肉だけで身体を支えている可能性が高いです。
呼吸は——
- 口からゆっくり吐く
- 鼻からゆっくり吸う
これが基本です。吐く方を少し長めにすると、副交感神経が働いてリラックスもできます。歩きながら呼吸を整える時間は、瞑想や禅の感覚にも近く、頭の中もスッキリしてきます。
歩行はハードな運動ではありません。心拍数も急激に上がらず、呼吸も乱れにくい。だからこそ、呼吸をコントロールしながら、体幹を使って、安全に続けることが出来ます。逆にランニングや高負荷のトレーニングでは、息が上がってしまい、体幹の意識まで気が回らないことが多いのです。歩行はゆっくりだからこそ、コアを丁寧に使う練習に最適なのです。
これが、歩行の大きなメリットです。お腹を「ちょっと締めたまま」歩く——たったこれだけの意識で、毎日の散歩が立派な体幹トレーニングに変わります。ジムに通わなくても、特別な器具を使わなくても、自分の身体一つで始められる。それが歩行の素晴らしさです。
第10話は「初期投資」です
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