第75話「見栄を張るな」

自分の歩き方研究は、経験値が積み上がることで良い形になっていきます。 6ヶ月経つとスマートフォンにワークアウト、歩数、心拍数が積み上がり、感覚と実力が合ってくるはずです。 1km=9分は、時計を見なくても、誤差はプラスマイナス10秒でしょう。

唯一、この計算を狂わせることがあります。 「見栄を張る」ことです。

誰かに対して見栄を張る。 対象者が居るから見栄を張るのです。 1人なら見栄は張りません。

例えば、異性に良いところを見せたい。 本来飛ばさなくていい場面で、オーバーペースで走る。 本当に小さなことなのですが、計画が乱れます。 計画が変わると、不安が出てくる。不安が出ると、体力は大丈夫でも、心が折れる可能性が出てきます。

体力と気力は別物です。 体は動いているのに、心の方が先に「あれ、思っていた展開と違うな」と感じ始める。一度その違和感が芽生えると、足取りまで重く感じてきます。実際の体力ではなく、計画通りに進んでいないことへの不安が、パフォーマンスを下げていくのです。

また、50km大会の中盤の話ですが、視界に入る他のランナーは1人でした。 私とその人だけが奄美大島の道を歩いていました。 その時に私はペースを守りました。対して、もう一人の方は私を意識したようで、抜いたり、抜かれたり。結果的には後方に下がっていきました。

見栄とは違うと思われるかもしれませんが、意識して計画を変更した時点で苦しくなります。 他人を基準にすると、自分のペースは必ず崩れます。相手が速ければ無理がかかり、相手が遅ければ気が緩む。どちらにしても、本来の自分のリズムから外れてしまうのです。

ここで、「前4:後6」を思い出してみます。

第21話では、ピッチを優先したうえで、ストライドは「重心バランス」で考えると示しました。歩幅を広げようと意識すると足が前に出すぎてブレーキになるため、歩幅そのものを狙わず、重心の位置を意識して結果としてちょうどいいストライドが生まれるようにする。1歩を10分割し「前4:後6」を意識します。振り出した脚を体の真下に近い位置で接地させ、後ろ脚で押し出す比重を少し多めにするイメージです。ポイントは早歩きと前傾姿勢。お腹に力を入れ、腕を振り、上半身と下半身をツイストし、軽く前傾する。これまで扱ってきた要素が集合する歩き方で、最初は「これで合っているか」と感じても、試行錯誤の中で身についていきます。時速6.5km(1km=約9分15秒)あたりで歩きと走りが混ざり始め、この速度帯で「前4:後6」が体感しやすくなります。1km=9分00秒ができてくると、30分で3km以上歩ける計算です。

見栄を張った瞬間、この「前4:後6」のバランスは崩れます。 速く見せようと足を前に出しすぎる、力んで腕を強く振りすぎる、上半身が反って前傾が消える。気づかないうちに、積み上げてきたフォームが一つずつ外れていきます。 そして一番怖いのは、本人にその自覚がないことです。「いつもより調子が良い」と思っているのに、実は無駄に力を使っているだけ。後半に必ずツケが回ってきます。

データも同じです。心拍数は嘘をつきません。見栄で走った日の心拍は、いつもの同じペースより必ず高く出ます。後で振り返ると、その日だけグラフが跳ねている。自分の感覚と数字を照らし合わせると、「あの時、見栄を張ったな」とはっきり分かります。

見栄よりも大切なこと。 目標に対して、最高のパフォーマンスを出すこと。 そのためには、誰かに見せるための歩きではなく、自分の体と相談しながら進む歩きが必要です。 素直な自分のままが良いです。

次は第76話「健康寿命が伸びれば」です。


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この記事を書いた人

歩き方研究員

49歳。
歩き方を研究して5年。
2026年
奄美ヨーリヨーリラン
53.47km完歩。

歩き方は才能ではありません。
研究すると必ず変わります。

このブログは
「自分の歩き方を研究する方法」を
100話で発信してます。

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