ドラゴンボールで孫悟空がスーパーサイヤ人になったのは、確かナメック星でのフリーザとの戦いだったと記憶しています。普段の修行ではどうしても越えられなかった壁を、極限の状況で一気に飛び越えた、あの瞬間。読者なら誰もが鳥肌が立った場面です。
これと同じ体験をしました。
普段はホームグラウンドで30分、60分、120分、180分、240分とウォーキングレベルを上げてきたのですが、300分の壁を越える為に、奄美大島に行きました。慣れた場所で慣れた距離をなぞるだけでは、ある所で頭打ちになります。それを越える為には、自分の安全圏から飛び出す必要がある、という事です。
目標距離32kmには届きませんでしたが、300分は達成しました。あのタイミングで普段出せない力を出せた気がします。場所が変わり、空気が変わり、覚悟が変わる。その全てが重なって、いつもの自分より一段上の自分が引き出されました。
そして、その後の回復で、私の体力、脚力もレベルアップしましたが、更に経験値として、給水方法とトイレタイムとウエア対策と足指対策が追加されました。挑戦は、距離だけを伸ばすのではありません。挑戦の途中で生まれた課題が、次のレベルに進む鍵になります。
詳しく説明すると、
水筒は柔らかい形状の250mlを2個。左右の肩に用意する。右は水、左はスポーツドリンク。重さを左右で揃える事と、用途で使い分けられる事の両方を満たします。中身が減っても潰れる柔らかい素材なので、空気を含まず、ザックの中で揺れません。
トイレは早めに行く。まだ大丈夫かな?と、次のタイミングを狙うと、苦しくなる可能性があります。我慢している時間は、ペースが乱れ、フォームが崩れ、本来使いたくない筋肉まで使ってしまいます。早めに済ませる方が、結果的にロスが小さい。
ウエアは、パンツの右ポケットにスマホを入れて、左ポケットにイヤホンを入れていましたが、右股関節を痛めるケースが多く、通気性の良い腹巻きタイプを用意して、体の真ん中にスマホとイヤホンを置く事で、左右バランスを整えました。たった数十グラムの偏りでも、何万歩と積み重なれば確実に体を歪ませる、という発見でした。
足指対策は、5本指インナーソックス、5本指厚手ソックス、つま先ワイドシューズ、インソール。長距離になればなるほど、指先の摩擦と圧迫が問題になります。指同士が触れ合わないようにし、つま先空間を確保し、足裏の沈み込みを支える。この四点セットで、最後の数kmで足が壊れる事をかなり防げます。
さあ、装備、準備、コース下見、体力、心肺機能、痛み対策が整ってきました。一つひとつは小さな改善ですが、全部が揃った時の安心感は別物です。
その時点での限界を超えたチャレンジをした後は、より強くなる。これは私の感覚では間違いなく起こります。体は、超えた経験を覚えています。一度でも越えた距離は、二度目以降は心の壁ではなくなる。これが超サイヤ人理論です。
大会前の最後の関門を超えました。あとは本番に備え、整えていくだけです。
次は第11章「自分の歩き方研究所 心得」、第75話「見栄を張るな」です。

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