今回も、50km完歩の実体験から深掘りしてみましょう。
私が全行程の中で「1km12分台」を記録したのは、合計2回ありました。
・15km地点(第1エイド) 水分補給、温かい豚汁でのエネルギーチャージ、そしてお手洗いでのリフレッシュ。
・41km地点(第3エイド) 水分補給と、少し長めのひと休み。
ここで興味深い発見がありました。なぜ、食事もお手洗いも済ませていない41km地点での休憩が、盛りだくさんだった15km地点と同じ「12分台」だったのか?
その理由は、ベースとなる**「歩行そのものの速度」**の変化にありました。
・15km地点:1kmを約8分30秒で歩けていた ・41km地点:1kmを約9分30秒まで落としていた
つまり、歩行ペースそのものに1分の差が出ていたのです。41km地点では、それまでキープしていたリズムを維持するのが難しくなっていました。数値上は同じ「12分」でも、その内訳は全く別物だったのです。
たった「1分の差」と思うかもしれませんが、長距離ではこの1分が体力差・疲労度を如実に表します。15km時点ではまだ余力があり、エイドで充実した休憩を取った上で12分。41km時点では、すでに歩く速度自体が落ちていて、最低限の休憩でも12分。同じ数字の裏側には、まったく違う体の状態があるわけです。
この後半戦で、お手洗いに寄らずに済んだことは大きなアドバンテージになりました。
実は大会の1ヶ月前から、当日のリズムを崩さないよう、お手洗いのタイミングも含めてシミュレーションを重ねていました。
水分補給の量、補給のタイミング、お手洗いに行く想定回数。長距離では、これら全部が「歩行戦略」の一部です。50kmで2〜3回のお手洗いは普通ですが、その時間と場所を予測しておくかどうかで、心理的余裕が大きく変わります。
体調には個人差がありますが、私の鉄則は**「お手洗いの休憩を後回しにしないこと」**。
「まだ大丈夫」と思わずに、エイドごとにコンディションを整えておく。この小さな積み重ねが、最終的なタイムの貯金や、心にゆとりを持って歩き続ける鍵になると実感しました。
同じ「12分」という数字でも、計画的に取る12分と、必要に迫られて取る12分では意味が違います。前者は次のキロのための投資。後者は失った力を取り戻すための支出。歩行データは、この違いを後から振り返るための貴重な記録になります。
次は第33話「1km=9分の歩行」です。

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