今回は、実体験を交えてお話しします。
私が好きな大会の一つに「奄美ヨーリヨーリラン50kmの部」があります。この大会の制限時間は8時間30分です。
完走のシミュレーションをしてみましょう。
- 1kmを10分で歩いた場合:50kmで500分
- 500分 = 8時間20分
制限時間まで残り10分。数字の上では完走可能ですが、実際の道中には不安要素が残ります。
1. 同じペースで50km歩き続けられるか? 30kmを超えると脚の疲労が蓄積し、ペースの維持は容易ではありません。後半は1km12分、13分と落ちていきます。余裕のない計算は、後半に破綻します。
2. トイレ、水分補給、食事、休憩の時間は? 10分の貯金では、体への補給と回復の時間が取れません。エイドステーションでの停止だけで10分を超えることがあります。靴紐を結び直す時間も、計算に入っていません。
この経験から、「1km10分」は完走のためのリミット速度(最低ライン)と位置付けています。これを下回ると、完走は難しくなります。
時速に換算すると6kmです。速歩きに近い速度ですが、ウォーキングを習慣にするなら、この速度を一つの基準にしてみてください。
日常での活用方法です。
スマートフォンのマップアプリで「徒歩15分」と表示された距離を、実際に歩いて計測してみてください。15分で到着できれば時速4km。10分で到着できれば時速6kmです。この差が、今の自分の歩行速度を示しています。1km10分を意識すると、体力の変化を速度で測れるようになります。1ヶ月前の自分と比較する基準として活用してください。
「自分の歩き方研究所」は40歳以上の方に向けて発信しています。40代以降は、体力の低下に気づきにくい時期です。速度という数字で自分の状態を把握することが、歩き方の研究につながります。
大会名にある「よーりよーり」は、奄美地方の方言で「ゆっくり、ゆっくり」という意味です。制限時間に余裕がある設定でありながら、1km10分で歩けばギリギリという設計は、歩くことの奥深さを示しています。奄美大島の自然と文化の中で、自分の歩き方を確認する機会にもなっています。
次は第31話「1km11分の歩行」です。

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