1km=9分を基準とすると、300分で33.33kmです。給水やトイレの時間を含めて、300分(5時間)で私の計画では32kmにしたい。チャレンジしてみるというよりは、ここは真剣勝負です。なんとなく歩く距離ではなく、自分の限界に手を伸ばす距離。心構えから違います。
ここでは私の経験談をお伝えします。
50km大会の2ヶ月前に、本番と同じコースを見ておきたいと思い、奄美大島の本番のコースを見に行きました。地図やレポートを読むだけでは分からない、坂の角度、路面の硬さ、風の通り方、日陰の有無。これは現地に行かなければ得られない情報です。
私はそれまで、25kmが自身の歩行の最長距離でした。25kmという数字は、これまでの自分にとって一つの壁。それを越えた経験がない、というのは精神的にも大きな不安要素でした。
せっかくだし、300分で32kmにチャレンジしました。25km以上の距離にチャレンジする事に少し怖さがありましたが、この現地視察という行動のおかげで、「やってみよう」と思う事が出来ました。場所が背中を押してくれる、というのは確かにあります。本番のコースだから、無駄足にはならない。挑戦する正当な理由が揃っていました。
いざ、本場と同じコースを歩き始めました。前半のコースは何度か通った事があったので、後半の15kmを往復して、合計30km。
結論から言うと、この後半15kmを知れた事は、本番の最後の粘りにとても役に立ちました。計算が成り立ったからです。「あと何km、あと何分、あの坂を越えればゴール」。この見通しが立つかどうかで、終盤の心の支え方が全く違います。知らない道を進むのは、霧の中を歩くのと同じ。知っている道を進むのは、地図を持って歩くのと同じです。
300分チャレンジの結果は30kmまでしか行けませんでした。あと2km進む目標でしたが、初の300分チャレンジで、股関節、足の指先が痛み、1km=9分も保てませんでした。痛みは突然来るのではなく、20kmあたりからじわじわと、最後の数kmで一気に主張してきます。これは経験しないと分からないものです。
ただ、300分は歩けましたし、満足感はありました。目標未達でも、自分の今の限界を正確に測れた事に意味があります。あと2km、何が足りなかったのか。装備か、ペース配分か、補給か、そもそもの脚の作り方か。具体的に振り返れる材料が手に入りました。
翌日は股関節の痛み、足の指先の痛み、更に脚全体的に筋肉痛となり、回復する為に体を休めました。痛みは敵ではなく、どこを鍛えればいいかを教えてくれる先生です。痛んだ場所が、これから本番までに強化すべき場所。データとして受け止めれば、次の練習計画が見えてきます。
と言う事で、300分以上の歩行を楽しもう(33kmチャレンジ)は高い壁であり、痛みを伴い、それでも満足する距離でありました。終わった後に「やって良かった」と思える挑戦は、人生にそう多くありません。この距離は、間違いなくその一つです。
是非、チャレンジしてみてください。
次は第74話「超サイヤ人理論」です。

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