大会3週間前には、もう体力向上のトレーニングはしません。 この時期に追い込んでも本番には間に合いません。むしろ疲労を残してしまうだけです。 ただ、何もしないわけではなく、本番と同じペースで10km程度の調整を繰り返しました。
脚の感覚を忘れないこと、ペースを体に染み込ませること。それが3週間前の目的でした。
この頃には10kmは安全にクリアできる距離でしたので、不注意によるケガ、例えばガラスを踏んでしまうとか、そういうケガを避けていました。 ちょっとした段差につまずいたり、急いで階段を駆け下りたり。普段なら何ともないことが、この時期には取り返しのつかない代償になりかねません。
あと、別件ですが、以前1度だけくしゃみをした時に軽いギックリ腰を発症しました。くしゃみをする時は手すりに捕まる。そうすると急激な動きをしないので、ギックリ腰にはなりません。その辺りを気にしてました。 小さな工夫ですが、こういう積み重ねが大会前の体を守ってくれる気がします。
昔読んだ本にこんな事が書いてありました。 江戸時代、ある剣豪が畑の畦道を歩いていた時に、釘を踏んでしまい、足の裏に刺さってしまいました。不運だと最初は思っていましたが、もし、自分よりも強く優れている剣豪なら落ちている釘を踏む様な不用意な事はしないだろう。自分が未熟なのだと。
若い頃にこの話を読んだ時はピンとこなかったのですが、年を重ねるごとに腑に落ちてきました。世の中の出来事の多くは「運」ではなく「察知できなかった自分」なのだと。
私の実体験でも、高校時代に野球で頭部にデッドボールを受けた事がありました。150kmの豪速球ではありません。高校生のカーブでしたから115kmくらいでは無いでしょうか。それでも避けきれずに頭部に。 もし、別の選手なら当たらなかったかも知れない。当たったとしても頭部は避けれたかも知れない。 ボールの軌道を読む目、投手の癖を見抜く観察力、咄嗟に身を引く反応速度。すべてが揃って初めて、危険を遠ざけられる。 その時はわかりませんでしたが、今なら予測だったり、実力不足を感じています。
大会までの3週間。 日常生活もトレーニングもケガなく過ごせました。安全のために家に篭っていたわけではなく、順調に過ごせましたが、そこには剣豪の油断が活きていました。 歩く道では足元に気を配り、人混みでは間合いを保ち、家の中でも一つ一つの動作を丁寧に。 おそらく、本番でもその心得は忘れないでしょう。
次は87話「大会前最後のサイヤ人理論」です。

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